【側面攻撃部隊】参加者

ブロントヴァイレス隊の右翼を攻撃する

ブロントヴァイレス隊の左翼の攻撃する

群れの後方より、可能な限り接近する

【側面攻撃部隊】MVP

探究者:アルド・フェオダール
 武器:入力端末
 行動:群れの後方より、可能な限り接近する
 詳細:腹部・脚部を中心に、弱点を探す。
アルド・フェオダールは、側面攻撃部隊に所属し、ブロントヴァイレスの弱点発見に際立った功績をあげました。
探究者:ソル・グラディウス
 武器:銃
 行動:ブロントヴァイレス隊の右翼を攻撃する
 詳細:狙いは陣形を崩すこと。囮となり、分散させながら戦う。
ソル・グラディウスは、側面攻撃部隊に所属し、ブロントヴァイレスの視界を奪うなど戦術的な功績を立てました。

【側面攻撃部隊】リザルトノベル

 光が明滅する。漆黒の大空に明滅する。
 青白い光が一瞬閃き、たちまち嘘のようにやんだ。
 ブロントヴァイレスの吐く雷によるものだ。側面攻撃部隊が作戦行動を開始したのだろう。
 光が消えればその後には、ほぼ例外なく紅蓮の焔が上がるのだった。エスバイロか艦艇かの区別こそあれ、いずれも味方機の撃墜を示すものに違いない。
 現在の空は、すでにどす黒いアビスの霞に汚染しつくされている。こうなってはもう、まともな通信回線の使用は望めないだろう。
「……やっぱりダメか」
 夜桜はアニマのスピカに、通信回路のスイッチを落とさせた。すでに回路は、耳障りな雑音の発生器でしかなかった。
 ここからは目と耳だけで戦況を判断しなければならない。それは、無数の刃が針山のごとく床に突き立てられた部屋を、目隠しして歩くようなものとなるだろう。
 一歩先は死。だがそれでも進まねばならない。夜桜の失った記憶は、生存の先にこそあるのだから。
 ブロントヴァイレス部隊の側面、右方向から急襲をかけるメンバーは夜桜だけではなかった。決して数は多くはないが、決死の斬り込み攻撃を行うエスバイロの機影が複数確認できた。
 そのひとつがモッコーの乗る機体だ。彼女は盾を構え、貨物船の陰から飛び出すやスズメバチのように急襲をかける。
「追いつめられる、ってのは好みの状況じゃないんだけどさ」
 風が渦を描いた。モッコーは螺旋の動きで、すんでのところで雷から逃れていた。側面からの攻撃は予想外だったのだろう、ブロントヴァイレスは煩そうに翼を上下させている。
 このときユーノの頭上を、ブロントヴァイレスの黒い爪がかすめている。しまった、とユーノは首をすくめた。味方が奇襲に出撃するなか、ユーノは搭乗機を貨物船の背に回し、船を障壁がわりにして隠れていたのだ。しかしここは安全地帯ではなかった。貨物船が爆発すれば、真っ先にその被害に巻き込まれてしまうことだろう。しかもこの貨物船には空賊まで迫りつつあるではないか。
 むしろ、ここにいるほうが危険だ。
「喰らえマジックミサイル! 手柄は天才ハッカーであるこのボクが頂く!」
 半ば捨て鉢になってユーノは飛びだし、頭上のブロントヴァイレスにせめて一矢報いんと攻撃を開始した。
 アニマのシナモンに叫びながら、キタミ ダイゴロウは銃の狙いを付けている。
「……わかっておるわいシナモン。わしとて、貨物船を盾にするつもりではないのじゃ」
 ダイゴロウの作戦は貨物船を利用し、神出鬼没の攻撃をかけることだ。巨竜の鋼の装甲にも必ずどこかに弱点があるはず……!
 特に狙いを特定せず、当たるを幸いとばかりに右側面から群れに飛び込む姿もあった。
「うおおおおおおおおお。俺は実は一回刺されただけでしぬぞーーー!」
 もぐらの叫びは、逆境にあっても奇妙な明るさを感じさせる。
「あのポジティブさ、ある意味尊敬に値するな」
 半歩遅れてもぐらを追うように、フィン アールヴが援護行動を行っていた。
 雅は群れの只中に飛び込み、数度の銃撃を加えては離脱するという戦法をとっていた。劇的なレベルとまでは言えないものの、多少なりとも竜たちの隊列を乱す効果は出ているようだ。
「ブロントヴァイレスに加えて空賊まで出てきた!」
 その両方に対処すべく、リーマス・ノースウェルはエスバイロの速度を落とさず短剣をふるいつづけていた。空賊にはナイフの一突きは効果的だが、竜の厚い皮を貫くには無力さを感じる。だがそれでも、諦めるにはまだ早いとリーマスは思う。
 右側面を突く集団には、遊軍的な存在もあった。各自エスバイロで自在に動いているものの、決して離れすぎたりしない。なぜなら彼らの目指すところは同じだからだ。ブロントヴァイレスの陣形を崩す。そのために、進んで囮となる。
「オーライ! やっちゃうよ」
 ミズーリ・T・ヘレンはエスバイロから腰を浮かせ、両脚で機体を挟むようにして立つと銃を空に向けた。気分は、遠い過去の時代、地上にいたという騎兵隊だ。進軍ラッパよろしく景気づけに数発空に撃ち、竜の一体の注意を惹くや座り直して回避に専念する。
「そんな攻撃、当たらないんだからね!」
 突風のごとき勢いで雷撃を避け、ミズーリは銃で狙撃する。倒せるとはさすがに思っていない。こうやって陣形を乱すことができればそれでいい。
 ヘリファルテもそんな命知らずの一人だ。
 ――みんながボスのもとへ行けるように、それだけを考えるんだ。
 アニマのペルランが同意の声を上げるのが聞こえた。私ならきっとできる、ヘリファルテは何度も自分にそう言い聞かせる。
 五十嵐 ファイアーズのエスバイロが大きく傾いだ。着弾か!? と問いかけるもレインズが、墜落した僚機の破片が当たっただけと教えてくれる。
 ファイアーズは耳を澄ませた。いつか弱点の伝達係から声が上がるはずだ。声でも、合図でも聞き取ってみせよう。それまで、絶対に墜ちるわけにはいかない。
 アリスは紫苑のアニマだ。いま、アリスは紫苑の求めに応じ入力端末に融合している。彼女の助けがあれば百人力、紫苑は敵と一定の距離を取りながらマジックミサイルを撃ち出していた。これはあくまで挑発が目的だ。竜よこちらを見ろ。全力で、見ろ。
 彼らの作戦は少しずつだが効果を現し始めている。
「あの竜、一匹だけ突出しています!」
 シャルロッテが呼びかけた。群れからはじき出される格好になったブロントヴァイレスがいる。
 了解、と返事してウォルター・クライネルトは機首をその竜に向け旋空した。孤立した竜なら倒せるかもしれない。
 竜の羽ばたきに巻き込まれ、メルフリート・グラストシェイドのエスバイロは嵐の海に漂う小舟のごとく二転三転した。コントロールが効かない。途上、貨物船のアンテナ部に接触して腕に激痛が走った。メルフリートは墜落を覚悟するも、
「メルフリートさん、援護する!」
 ベリル・トレフォイル・リコリスが銃を乱射しながら前進し、竜の注意を惹くことで救ってくれた。竜に比べこちらはあまりに無力だ。だからできることといっても、それはちょっかい程度でしかないだろう。だがそれでいい。死なず続ければ勝機は見えてくるはずだ。
 すまない、と言ってメルフリートは機体を立て直した。アニマに呼びかける。
「バイコーンは多少のダメージでは落ちんよ……この程度で動じてくれるなよ、クー? 僕はまだ、世界の正しき姿を目にしていないんだ」
 ぱっと背中からライフルを引き抜くと、先魁ハルカは竜に次々射撃を浴びせた。
「ノゾミ! 操縦は任せたからね!」
 エスバイロの操縦はアニマに一任している。目標は相手の指揮系統一本、ゆえにノゾミは、先頭を行く竜を集中的に狙うのだった。
「この賭、吉と出るか凶と出るか……!?」
 思わず口から出たハルカの声に応じる声があった。
「その賭け、一口乗らせてもらおうか」
 エンジン音を唸らせながらハルカ機にならぶエスバイロがあった。ソル・グラディウスだ。彼はスナイパーライフルを両手構えし、ハルカ同様、手放しでエスバイロにまたがっていた。高速で飛行し、ときに激しく上下する機上にあっても、ソルの立射の姿勢はまるで動じない。
「気味の悪い……害虫が。さっきから攻撃が効きゃしねぇ」
 毒づきながらもソルは、竜の巨大な目に攻撃を浴びせ続けた。あの眼球を銃弾で射抜けないことはもう理解している。だが視界に銃弾が当たり続ければ、ブロントヴァイレスとて苛立つはずだ。それが乱れにつながると彼は読んでいた。

 視点を変えて竜の群れの反対側、すなわち左翼方面を見てみよう。
 ここでも奇襲隊による死闘が繰り広げられている。こちらは貨物船がない分、飛んでくる雷も多い。ゆえに戦死者の数も多かった。
「ああ……」
 イツカ・クロフォードは唇を噛みしめた。目の前で僚機が直撃を浴びたのだった。エスバイロもその搭乗者も、炭のようになり黒煙を吹きながら墜ちていった。イツカが助かった理由は運もあろうが、有効射程ギリギリのポジションを保っていたためも大きいだろう。
 同じ光景をフラズーム・ド・フラガールも目撃している。されど悲嘆に暮れている暇はない。さもなくば次に、アビスの餌食になるのは自分だろう。精神を研ぎ澄ませ動きを最小限にし、竜との距離を一機に詰めると疾風迅雷のナックルを叩き込む。
「……ッ!」
 渾身の一撃を加えたはずだ。それなのに、手応えがまるで感じられなかった。ブロントヴァイレスは痛みどころか、かゆみすら感じなかったのではないか。それでもフラズームは諦めない。ならば次の一撃を与えるまでだ。次も駄目でも、まだその次がある!
 鶉は迷わずエスバイロを急降下させた。
 ――さすが×-(ばついち)!
 ×-は普段は口うるさいアニマだが、いざとなれば鶉が、もっとも楽しく感じられる行動を導き出してくれる。このとき彼女が演算したルートは、自殺同然の危険な垂直降下だった。
「喰らいな!」
 瘴気が感じられるほど急迫した竜の口に、鶉は抗アビス薬の溶液を塗った短剣を放り込む。同時に離脱。そして振り向いた。
 崩れ落ちるブロントヴァイレスの姿を鶉は期待した。だが現実は、まるで効果が見られない。多少はダメージを与えられたと思う。しかし、大きな被害を与えるには足りなかったということか。
 神咲 咲樹は拳を握りしめた。
「弱点情報、まだ入ってこないの!?」
 すでに戦線が開かれてかなりになる。ここまで咲樹は攻撃をなるだけ控え、味方のために竜の前を飛び回ることを基本方針としてきた。されど熱望している報せはいまだにないのだ。
 いつまで火力を温存すればいいのか――焦る気持ちはあったが、それでも咲樹は方針を守り続ける。
 テイクはエスバイロにしがみついた。アニマのアウィンが、彼の指示以上の速度でエスバイロを疾走させたからだ。
「アウィン、もうちょい近付いて……ちょ、速ぇよ! 落ちる! 振り落とされるってぇ!」
 しかしアウィンの考えに気がつくと、テイクはそうか、と声を上げたのである。
「味方のいない場所に、思いっきり魔法を撃ちこめるようにしてくれたんだな!」
 ならば遠慮は無用だ! アウィンは白い歯を見せた。男子魔法少女の固定砲台っぷり、たっぷりと拝ませてやろう!
 膨れたシルエットのエスバイロが次々と、縦列の編隊を組んで竜の群れを目指す。いずれも中央部が膨らんでおり、甲虫を思わせる形状になっていた。急編成された爆薬部隊だった。彼らは限界まで機体に爆薬を積み、エスバイロごと竜に特攻をかけようというのだ。
「その心意気、無駄にはさせない!」
 由李唖は荒々しく声を上げ、編隊を援護する。
 シュリ・インザリアスも同じだ。杖を旗のように振り上げて呼びかけた。
「支援は任せて。貴方達は前へ」
 そうして一機、二機と特別製の友軍機を送り出すのだ。大量の爆薬を積んだエスバイロである。どうしても彼らの航行速度は遅い。ゆえに援護は必要不可欠だった。
 クラークはCr33『ブリスコラ』を駆り、入力端末から次々とミサイルを放った。
「……新たな物語が始まる予感がするのです」
 これでもかとクラークは弾幕を張る。爆弾部隊さえ守り切れればそれでいい。滅亡を免れればきっとまた始められる。ここから始めよう。
 爆弾部隊が竜に到達し始めた。先頭のエスバイロはすでに爆発している。さらに何機も続く。
 無理は承知の作戦だ。しかしイザードは、この作戦にある種の哀しみを覚えてもいた。
 爆薬搭載機はブロントヴァイレスにたどり着けないことがほとんどどだったからだ。航行速度の遅さは致命的だった。
 爆弾搭載機のパイロットは皆、着弾寸前にエスバイロを飛び降りるのだが、失敗して自身も爆弾と運命をともにする者が頻発していた。首尾良く飛び降りても、救出かなわずアビスに墜ちていく姿も少なくない。
「怖い……でもがんばるの、じゃっ」
 ヨスガは息を止め、爆弾が起こした炎の輪をくぐった。さらに、ブロントヴァイレスの顔の前を飛んで目を引く。間一髪! 雷撃をアクロバット飛行でかわした彼女は、爆弾搭載機を捨てたパイロットを回収する。
「緊張したのう」
 ヨスガは額を拭った。びっしょりと冷や汗で濡れている。
 Apokalypsisは周囲を巡りながら、竜の情報を少しでも得るべく短い攻撃を繰り返していた。
 ボス格の竜、『グレーター』と通称されるもの以外は区別がつけづらいが、よく見ればそれぞれ、目の形状や鱗の模様に濃淡、飛行姿勢などに明確な差がある。だが人間がそれぞれ、種族的な外見差はあれ心臓が弱点であるように、竜も共通の弱点を有しているかもしれない。知りたいのはそこだ。
 レイ・ヘルメスはうなずいている。アニマ『UNO』の問いかけを肯定しているのだ。
「その通りだ。この世界はまだ終わらせまいよ」
 レイはエスバイロの爆薬攻撃も、ブロントヴァイレスにとっては蟻に噛まれた程度にしか感じられないであろうことを知っている。だが知っていて、なおもこれを必死で援護する。
 なぜならときとして、一丸となった蟻が巨象を倒すこともあるのだから。
 朱狼・ギフトナールはこれら状況を見極めると、正面攻撃隊に情報を求めるため機首を巡らせた。
「ちょっとあれ食べてくる……いや、情報を得てくる!」
 朱狼からも各部隊に与えられる情報はある。
 ひとつは、残念ながら少々の抗アビス薬では竜を絶命させるには至らないということ。
 そしてもうひとつは、絶望的な状況でも、誰一人真の意味で絶望はしていないということ……!
 
 竜の群れを左右両翼から挟撃するメンバーよりやや遅れ、第三の側面攻撃部隊が出現した。
 正しくは側面攻撃とは言えないだろう。彼らは後方から竜を急襲したのだから。
「しかとその目に焼き付けなさい!」
 アレンジしたシスター服をはためかせ、エティア・アルソリアは大きく杖を頭上で回した。マーチングバンドの指揮杖のように。
 しかし鼓笛隊の指揮杖と異なり、エティアの杖がもたらすのは音楽ではなく剣と魔法、ミサイルに銃器の重奏攻撃だ!
 エティアの杖に導かれるように、真っ先に切り込んだのはベル・フラワー、
「ジルベル頼むわね」
 の呼び声も勇ましく、新月のごとき短刀を閃かす。
 KANAは一発も弾を撃たぬまま、乗機に同期したLUNAに命じ矢のように竜に肉薄した。
 竜の眼前に回り込むや狙い定め、銃の引き金を引く。二度。
 着弾を確認する暇もあらばこそ、KANAはつむじ風となりその場から離脱している。
「ヒッヒ……やっておくれだねェ、あの子……♪」
 うっとりとした表情で、KANAを追うのはアリシア・ストウフォースだ。
「闘いを楽しもうかァ。この注射器でねェ」
 すでにアリシアは二の腕から出血しているが、こんな怪我など放置の構え、
「目に刺せたらいいこと起こりそう……♪」
 上気した表情で、竜の巨大な眼球に注射針を投じて刺した。
 謎めいた女戦士onlineは、マフラーをはためかせながらアリシアに続いていた。
「……」
 現在ブロントヴァイレスの弱点がわからない以上、火力は温存したい。ゆえにonlineは、無駄撃ちせぬよう心がけながら魔法を放射する。真っ赤な火球は、花火のように飛び竜にぶつかっていくのだった。
 小柄だが獰猛なグズリのように、告路 千景は鋭い爪を出して空を縦横無尽に駆け巡る。
 千景の爪は、手にした短刀だ。アサシンの彼女の手に、ちょうど収まるサイズである。
 スピード主体の戦法に、この短刀はぴたりと合致した。急降下して竜の目を襲う。
 星野平匡は舌打ちした。
 雷光を受けたのだ。
 幸い後部を焼かれた程度だが、それでも、平匡の機体は制御を失い墜落をはじめている。
 しかし平匡はパニックを起こしていなかった。それどころか、トレードマークの黒縁眼鏡をかけ直す余裕すらあった。
 明鏡止水の心境だ。今さらじたばたして何になろう。
「自分のことは二の次。目潰しして、相手を弱体化させれば仲間がトドメを打ってくれるはずさ」
 アニマのハルキに呼びかけると、逆さになったまま平匡は銃を構え竜の目を撃ったのである。
 後方からの思わぬ攻撃に、竜たちの進軍速度がやや落ちたようだ。
 苛立ったのか竜は一斉反撃を後方部隊に行いはじめた。
 しかしこれこそ、リゼ オルコットの待っていた展開だった。
「よし……!」
 神咲咲樹の機体が、遠く視界の隅に見えていた。彼女のように竜の眼前を飛び回るメンバーのお陰だ……怪物の真上に接近することができたのは!
「いざとなれば竜に呑まれたって!」
 その覚悟で両手剣を握り、竜の眼前に落下攻撃をかける。
 成功だ! リゼの剣は柄まで、深々と竜の目に突き刺さった……!
 目に集中攻撃を浴びた竜が悶えるように身をくねらせた。
 その尾が別の竜に当たり、これでバランスを崩した竜が、翼でまた別の竜を叩いてしまう。
 群れの後方に、やにわに混乱が発生したのだ。左右両翼の攻撃が奏功したこともあって、混乱はさらに巨大化していく。
 この機に乗じ、弱点を探すべく行動を開始した一隊が速やかに行動に入った。
 目指すは、完全にはぐれ孤立した一頭だ。この竜をサンプルとして弱点を見つけ出すべく、エスバイロで一斉に取り囲む。
「咲樹、リゼ、成功だよ……!」
 通信回線が死んでいる現状、声が届かぬとわかっていても、ラルフ アレンスは感謝の言葉を贈らずにいられない。
 幼馴染みの二人は、それぞれの持ち場で自分の務めを果たした。
 だから次は自分の番だ――ラルフはエスバイロのアクセルを最大限に回した。
「誰一人死なせない……咲樹もリゼも、みんなも……!」
 食虫植物のごとき竜の口、その内側を狙ってラルフはミサイルを乱射した。ここが弱点であると信じて。
 霞ヶ浦・スミカはぶるっと武者震いした。そんな自分を叱咤するように叫ぶ。
「さあさあやってきた! 千載一遇のチャンスってやつだ!」
 目を狙ってくれたメンバーに感謝しつつ、スミカは竜の頭部・胸部を中心にエスバイロを巡らせ弱点を探す。
「目指すは一攫千金! 一発逆転大穴狙いと洒落こもうぜ!」
 気分はまさにギャンブラー、ルーレットの一点にすべてのチップを積まんとする心境だ。勝敗はきっと、その一点を見極める目にかかっている。
 シエル・フィフスは理論派、まずは観察と分析をしっかり行いたいと考えている。
「ブロントヴァイレスの下半身は推進力に特化しているはず……とすれば、耐久力の要は上半身にあると考えています」
 シエルの言葉にうなずくと、琥太郎・J・バスカヴィルは気配を殺して竜に迫った。
「……」
 黒一色に見える竜の鱗だが、一枚一枚にはそれぞれ濃淡がある。密度だって一定ではない。
 まず琥太郎は色の薄い部分に短剣で切りつけていた。反応を見て今度は濃い部分を調べてみよう。着実にいきたい。撃墜の危険からはきっと、アニマのアイリーンが守ってくれるはずだ。
 セリナは竜の間接部分を重点的に攻撃した。
 まずは首。
 つづいて翼の付け根。
 一撃一撃は軽くとも、手数はなるべく多くするようにする。握る剣が汗で滑りそうになるが、そのたびに力を込めてセリナはこらえていた。
 ティリエ・リリナは、竜の胸を中心に攻撃していた。彼女は一切口をきかない。言葉を使わずとも、アニマとは意志が通じ合っているのだから。
 ティリエの放ったマジックミサイルは、開きゆく朝顔の蕾を思わせる幻想的な流線型を描いていた。
 その少し下方にRichard Lowellがいる。
「なんつーか、実にくそったれだな」
 近くで見る竜の体は遠くで見るよりずっと禍々しい。据えた匂いがする。しかもその匂いは、絡みつくような粘性の瘴気を伴っているのだ。死の匂いだ――Richardはそんなことを思った。
 だがまだRichardに、死を迎え入れる意思はない。彼はアニマに呼びかける。
「せいぜい死なねーように注意して動くか……いいか、死ぬなよキャロル」
 腹部と脚部を探るメンバーも懸命の捜索を続けていた。
 彼女の名はエフ、冷ややかだが深みを帯びた黒い瞳のエルフ。彼女がみずからに課した使命は世界の真理を追い求めることだ。
「すべてはエフの悲願の為に」
 ここで世界が崩壊すれば、どうして真理にたどり着けよう。腹部に綻びがないか、脚部に芽のようなものはないか――エフは注視する。
「攻撃? 後じゃ!」
 天津智 氣吹は、アニマのO-Lphaにそう告げていた。攻勢は弱点を見つけてからだ。
 全容を確認すべく一旦退いて戦況を確認した氣吹は、背筋が寒くなるのを覚えた。誇張ではなく、背筋に氷を摘められた心地がする。
「主力に穴が空いた……とな!」
 側面攻撃部隊が崩れているではないか。一箇所が突破されたらしい。たちまち綻びは拡大し、次々とエスバイロや艦船が落ちているのがわかった。
 急を報せる氣吹の声を聞き、朱月 朔夜は奥歯を噛みしめた。
「もうおしまいだというのですか……!」
 そんなはずはない。いや、そんなことにはさせない!
 正面部隊の援護に回りたいという心を抑え、朔夜は弱点探しに注力した。もう、多少のダメージなど構っていられない。風圧に打たれ、いつの間にか額から出血していたが、それでも朔夜は探索をやめなかった。
「見てくれ……あの部分、鱗の形が逆さではないか!?」
 アルド・フェオダールが指さした。
「えっ?」
 ミーティア・レン・ヒューゲルは目を凝らした。
「本当だ! 長い方の辺が上にある気がする!」
 ブロントヴァイレスの鱗はダイヤ型をしている。左右はシンメトリーだが上下はそうではない。下部が上部の倍ほど長い。
 ところがアルドが見つけた鱗、ブロントヴァイレスの右足の付け根付近にあるその一枚だけは、びっしりと埋まった他の鱗とは上下が正反対になっているのだ。
「攻撃を集中せよ」
 エフのミサイルが先陣を切った。無論狙うはあの鱗だ。アルドの魔弾が追う。
 すると驚いたことに、それまで蚊を追いはらうような反応しか見せなかったブロントヴァイレスが甲高い声を発したではないか。
 それは明らかに、苦しんでいる声だった。同時に、撃たれた部分から黒い体液が間欠泉のように飛び出していた。
 間違いない。
 あれが弱点のようだな、とエフはうなずく。
「この貧弱な火力であれだけのダメージを与えているのだ。大型戦闘艦の主砲でもぶち込んでやれば……」
「竜の逆鱗というやつか……顎(あぎと)にあるという先入観があったが」
 アルドが呟いたとき、前方で大きな爆発が起こった。
 天を焦がすほどの火柱、それは、巨大飛空艇レーヴァティンの本隊が噴き上げたものだ。
 艇の中央が砕けていた。
 地上が炎に包まれ、そのただなかにブロントヴァイレスが跋扈しているのが見える。殺到している。
 悲鳴のような咆吼のような音を上げ、火柱が何本も続いた。
「レーヴァティンが……沈む……」
 朔夜は両目を覆った。ついに恐れていたときが来たのだ……世界の終わりが。
「いいや、認めぬ限り終わりではないのだよ。そうは思わんかね?」
 つきしたは首を振った。そしてリュートをかき鳴らし、高らかに歌い始めたのである。
「歌は聞いてもらうものじゃないの! 歌は聞かせるものなの! だから歌うの!」
 届けこの声、と、喉から血が出るほどに絶唱する。
「わっちは世界アイドルになるの! それまで世界は絶対に終わったりしないの!」
 ミーティアも氣吹も、この情報を届けるべく散った。
 しかしアルドは天を仰いだ。
 アビスの闇が拡大している。もう炎も雷光も見えない。
 視界が闇に包まれる。闇に奪われていく。
 意思も。
 知恵も。
 命も。  

 未来も。

(執筆:桂木京介 GM)
正面攻撃部隊
押し寄せるブロントヴァイレスから都市を守れ!
側面攻撃部隊
決死の妨害工作! 敵を引っ掻き回せ!
アビスメシア対策部隊
都市機能を守れ!
救護部隊
市民を守れ!

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